映画「岬のマヨイガ」の原作は、柏葉幸子さんの同名の児童小説です。

原作である岬のマヨイガのモチーフとなったのは、東日本大震災と岩手の不思議な伝説を記した「遠野物語」に出てくる「マヨイガ(迷い家、マヨヒガ)」です。

さらに、遠野物語で出てくるマヨイガの舞台は、岩手県の「白見山」の麓だと言われています。

そこで今回は、遠野物語に出てくるマヨイガの物語のあらすじ内容についてご紹介します。

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【映画】岬のマヨイガのあらすじ

 

遠野物語を解説する前に、映画「岬のマヨイガ」のあらすじ・イントロダクションをざっくりとご紹介します。

イントロダクション

居るべき場所を見失った17才の少女と声を失った8歳の女の子がたどりついたのは、懐かしくてすこしふしぎな伝説の家《マヨイガ》でした――。

居場所を失った17歳の少女・ユイ。
彼女が辿り着いたのは、どこか懐かしさと共に温かみを感じさせる、海の見える古民家“マヨイガ”だった。

それは、“訪れた人をもてなす家”という岩手県に伝わるふしぎな伝説。
血のつながりがない新しい家族たちとの、ふしぎだけど温かい共同生活が、新しい居場所“岬のマヨイガ”で紡がれていく。

(引用元:YouTube「映画「岬のマヨイガ」特報映像」

あらすじ

ある事情で家を出てきた17歳のユイと、両親を事故で亡くしたショックで声を失った8歳のひより。
居場所を失った二人は、ふしぎなおばあちゃん・キワさんと出会い、海を見下ろす岬に建つふしぎな古民家“マヨイガ”に住むことに。

なりゆきでキワさんに着いて来てしまった二人だったが、訪れた人をもてなす伝説の家“マヨイガ”、そしてキワさんの温もりに触れ、それぞれ傷ついた心は次第に解きほぐされていく。

そんなある日、キワさんを訪ねて“ふしぎっと”と呼ばれる優しい妖怪たちがやって来て――

(引用元:YouTube「映画「岬のマヨイガ」特報映像」

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映画「岬のマヨイガ」の原作は同名の児童小説

映画「岬のマヨイガ」の原作は、柏葉幸子(かしわば さちこ)さんによる同名の児童小説です。

なお、作者の柏葉さんは岩手県宮古市生まれで、作品は、岩手日報内の「日報ジュニアウイークリー」で連載されたものが、2015年9月11日に加筆修正され刊行されています。

この作品は、岩手県出身、盛岡市在住の柏葉氏が東日本大震災をモチーフに描いた日常ファンタジーです。

また、遠野物語を彷彿とさせる東北の民話を交えながら、震災で居場所を失った 17歳の少女が海の見える古民家“マヨイガ”で新しい家族と共同生活を送る姿が描かれています。(映画.com

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遠野物語のマヨヒガの舞台は「白見山」のふもと

後述する、「岬のマヨイガ」は、「遠野物語」がモチーフとなっています。

この等の物語に「マヨヒガ(マヨイガ)」が出てくるのですが、遠野物語では、マヨヒガに迷い込んだ舞台は「白見山(しろみやま)」のふもととされています。

現在は、整備などもされており迷うような、うっそうとした森ではないとのことです。

白見山所在地:岩手県遠野市、川井村、大槌町境界
標高:1172.6m

岬のマヨイガのモチーフは「遠野物語」


岬のマヨイガは、東日本大震災と遠野物語をモチーフにしています。

実際に、「マヨイガ」の物語は、民俗学者である柳田國男(やなぎた くにお)の「遠野物語」にてはじめて文章に書き起こされています。

 

なお、遠野物語は、土淵村(現在の岩手県遠野市)出身で民俗学者の佐々木喜善(ささき きぜん)が、遠野に伝わる民話を柳田國男に語ったことがきっかけで執筆されたものになります。

佐々木喜善は、遠野物語の語りてとして知られており、「マヨヒガ」という言葉を定着させた人物だとか。

岩手の伝説「マヨイガ」とは?

柳田國男(やなぎた くにお)の「遠野物語」における「マヨイガ(マヨヒガ・迷い家)」とは、岩手県の遠野の伝承にある「訪れたものに富をもたらすとされる山中の幻の家」のことを指しています。

この「マヨイガ」には容易にはたどり着けない、実在する建物ではなく一種の異界だとされています。
マヨイガは、「遠野物語」の63話と64話ででてきます。

遠野物語「マヨヒガ」の物語のあらすじ&内容

63話「六三 家の盛衰」〜現代語訳〜

原文は、大変難しいので日本古典文学摘集にて現代語訳された遠野物語63話「家の盛衰」の物語について以下、ご紹介します。

小国の三浦某というのは村一番の金持ちである。今より二・三代前の主人、まだ家は貧しくして、妻は少々愚鈍であった。

この妻、ある日門の前を流れる小さい川に沿って蕗を採りに入ったところ、よい物が少ないので、次第に谷の奥深くへと登っていった。

そして、ふと見れば、立派なる黒い門の家があった。
怪しいが、門の中に入って見ると、大きな庭で、紅白の花が一面に咲き、鶏がいっぱい遊んでいた。

その庭を裏の方へ回れば、牛小屋があって、牛が多くおり、厩があって、馬が多くいたが、さっぱり人がいない。

そうして玄関から上ったところ、その隣の部屋には朱と黒との膳椀をたくさん取り出してあった。
奥の座敷には火鉢があって、鉄瓶の湯が沸き立っているのを見た。

しかし、ついに人影がなかったので、もしかしたら山男の家ではないかと急に恐ろしくなり、駆け出して家に帰った。

この出来事を人に語ったものの、本当と思う者もなかったが、またある日、我が家のカド一に出て物を洗っていると、川上から赤い椀が一つ流れてきた。

あまりに美しいので拾い上げたが、これを食器として使ったら汚いと人に叱られまいかと思い、ケセネギツ二の中に置いて、ケセネ(雑穀)量る器にした。

ところが、この器で量りはじめてからというもの、いつまで経ってもケセネ(雑穀)が尽きない。
家の者もこれを怪しんで、女に尋ねたとき、初めて、川から拾い上げたことを語った。

この家は、それから幸運に向かい、そして今の三浦家となった。

遠野では、山中の不思議な家をマヨイガと言う。

マヨイガに行き当たった者は、必ずその家の内の器具・家畜・何であっても持ち出してくるのがよいとされている。

その人に授けるために、こうした家を見せるのである。
女が無欲で何も盗んでこなかったので、この椀が自ら流れてきたのだろうと言われている。

引用元:遠野物語
現代語訳引用元:日本古典文学摘集「遠野物語」

ざっくり簡単に物語を説明すると…

三浦家は、今はお金持ちとして知られていますが、2、3代前までは貧しい家でした。
三浦家の奥さんは、ある日、立派な黒い門のある家を見つけました。そこには、家畜がたくさんおり、部屋には美しい紅や黒の食器が並んでいますが、人の気配はありません。

奥さんは貧しいにも関わらず、結局、この家から何も持って帰らなかったわけです。
その後、川で洗い物をしていると、赤い椀が流れてきて、これは喜んで家に持って帰り雑穀を量る器にしました。

すると、いつまでたっても雑穀は減ることはなく、三浦家は繁栄し今の裕福な三浦家になったのです。
奥さんは無欲だったので、川から赤い椀が流れてきたのだろうと言われています。

63話では、マヨヒガによって家が繁栄しています。

実在した三浦家に伝わる伝承

上記の63話の物語の大元は、遠野市に隣接する川井村の小国に実在した豪家・三浦家に伝わる伝承ということです。

この三浦家は、1804年〜近年まで村一番の豪家で、1976年には、7代目三浦嘉矩が小国村村長に就いたほか、その後も村会議員や県会議員、郵便局長の歴任などの功績があったようです。

なお、この伝説は三浦家が「自分の家のもの」ではなく、他の村民が三浦家の話として噂したものが伝承されているのだとか。

(参考:「マヨヒガ」伝承に込められた心意の再考:柳田國男・佐々木喜善を出発点として/著者・佐々木赳人

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64話「六四 家の盛衰」〜現代語訳〜

金沢村一は白望の麓(白見山の麓にある金沢村)上閉伊郡の中でもとりわけ山奥で、往来する者も少ない。
六・七年前、この村から栃内村(現遠野市)の山崎の某婦の家に娘の婿を取った。

この婿、実家に行こうとして山道に迷い、またこのマヨイガに行き当たった。
家の有様、牛・馬・鶏の多いこと、花の紅白に咲いていたことなど、すべて前の話の通りである。

同じく玄関に入ってみると、膳・椀を取り出した部屋があった。 敷に鉄瓶の湯が沸き立ち、今まさに茶を煎れんとするところのように見え、どこか便所などのあたりに人が立っているようにも思われた。

茫然として、後にはだんだん恐ろしくなり、引き返して、そうして小国の村里に出た。

小国では、この話を聞いて信じる者もなかったが、山崎の方では、それはマヨイガだろう。行って膳椀の類を持ち帰って長者になろうと、婿殿を先に立てて、大勢でこれを探しに山の奥に入り、ここに門があったと言う場所に来たものの、目にする物もなく、むなしく帰ってきた。

その婿も、ついに金持になったという話を聞かない。

引用元:遠野物語
現代語訳引用元:日本古典文学摘集「遠野物語」

ざっくり簡単に物語を説明すると…

マヨイガのおかげで家が繁栄した三浦家ですが、この主人公となる婿はその話を知っていて、実家に帰る途中に、マヨイガを見つけました。噂通りでしたが、怖くなって主人公は何も持ち帰らずに引き返します。

引き返した場所は小国の村里で、マヨヒガの話を小国でしたものの誰も信じませんでした。しかし、婿に行った山崎でこの話をすると「それは、マヨヒガだ。椀を持ち帰って金持ちになろう」と婿を先頭に、みんなで門があったという場所まで行きましたが、何もありませんでした。

以後、この主人公が金持ちになったという話は聞いてないという内容です。

64話では、マヨヒガに行ったものの家が繁栄はしていません。

遠野市土淵町栃内山崎の川久保家に伝わる話

64話の話については、主人公の婿入り先である遠野市土淵町栃内山崎の川久保家に伝わる話であるとのことです。

川久保家は三浦家のような豪家ではなく、一般の家庭だったということです。

(参考:「マヨヒガ」伝承に込められた心意の再考:柳田國男・佐々木喜善を出発点として/著者・佐々木赳人

遠野物語には、天狗、河童、座敷童子など妖怪も登場

「遠野物語」は、岩手県遠野地方に伝わる逸話や伝説などを記したもので、明治43年に発表されました。

原文は、なかなか読みづらいですが上記のように現代口語文で、わかりやすくしたものが出版されています。

なお、遠野物語には「マヨヒガ」だけでなく、天狗、河童、座敷童子など妖怪。
そのほか、山人、神隠し、臨死体験、あるいは祀られる神とそれを奉る行事や風習など数々の説話が掲載されています。

マヨヒガの物語だけでも面白いので、個人的にこの遠野物語をじっくり読んでみたいものです。
不思議な話がお好きな人は、1度、ご覧になってみてはいかがでしょうか。

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