NNNドキュメントで放映されたドキュメンタリー作品『兄~おにい~』
番組が始まって44年初となる監督が現役学生の作品である。

『兄~おにい~』は日本ポストプロダクション協会が毎年開催しているコンクール
『第18回JPPA AWARDS』『2014学生映像技術部門入賞作品シルバー賞』を受賞した。

米田愛子 兄

出典:大阪芸術大学

受賞がきっかけとなり『NNNドキュメント』で放映されることとなった。

監督は大阪芸術大学の学生、米田愛子(こめだあいこ)さん(当時21歳)。
奈良県に住む23歳の兄・米田武士(こめだたけし)さんを題材としたドキュメンタリーを製作した。

武士さんは小学生の頃に『顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー』を発症した。
首や肩、腕に特に負担がかかる症状を持つ。

彼女がドキュメントを製作した意図は
『私は、筋ジストロフィー患者である兄に対して興味をもっていた。
毎週末は友人と出かけ、旅行に行く。アクティブに過ごすことが多い兄。
体の苦痛を訴えることはあっても、人生に悲観したような様子や発言は一度も聞いたことがなかった。
悲観することはないのか?絶望はないのか?兄を知るべく、私は兄のドキュメンタリーを制作した』
と応募書類に書かれていた。(NNNドキュメントより)

武士さんは、知らない人であれば
病気に侵されているとは思えない明るい青年である。

武士さんは高校の時に体操部に入部していた。
練習は厳しくゲロを吐くほど辛かったこともある。

当時、自分が病に侵されているとは知らず
腕立て伏せもできず筋肉もつかないのは『自分の甘え』だと思っていた。

しかし先生に『おかしいから病院に行け』と言われたのが
きっかけで初めて病気に侵されていたのだと知る。

『病気が発覚してショックだったか?』という愛子さんの質問に対して
武士さんは『ほっとした。もうこれでゲロを吐かずにすむ。』と答えている。

高校卒業後、専門学校へ進みその後、知人の紹介で工場に就職した。
しかし体には相当な負担がかかる。武士さんは辞職し事務の公務員を目指している。

武士さんはこう語っている。『もし事務員の公務員になったとして
やっぱりしんどかったらまた違う仕事を探していけばいい』

何事もポジティブに物事をとらえいる。
ポジティブで明るい性格の為か彼には友人が多く、誘いは絶対に断らない。
その性格から『盛り上げ役』でもある。

しかし友人と遊ぶのにも彼の体には相当な負担がかかっている。
体は辛いが、『人や友達が楽しんでくれるのなら』という気持ちと
しんどさよりも楽しさが勝つと語っている。

そんな前向きな彼も自殺を考えて『富士の樹海に行こうか』と思った事もある。
それでも『やっぱり生きたい。生きてるだけでまるもうけ』だと語る。

妹だからこそ聞ける質問が多く、妹だからこそ製作できたドキュメンタリーだと思う。

武士さんの話を聴いていると彼は『一瞬一瞬を大切に。そして楽しんで生きる』
事に集中しているように感じた。

正直ドキュメンタリーを見る前は『感動物』だと思っていた。
しかし、この作品は私たちが忘れがちな『人が生きる意味』を教えてくれる。

ちまたでは、人生をよりよくするための自己啓発などが行われているが
武士さんの言葉には、それの何百倍もの力があるように思う。

『今を生きる』『当たり前の事の素晴らしさに気付く』『自分を受け入れる』
『家族・友人を大切にする』『感謝の気持ちを持つ』そういった人間の基本である
部分をもう一度考え、大切にしようと思わせてくれる作品であった。

参考文献:2014年9月15日放送NNNドキュメント:兄(おにい)妹「筋ジスになって絶望はないの?」/大阪芸術大学


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